毎月10日ごろ配信のARIA Solutionのメールマガジン「社労士アツコの事件簿」は、ストーリー形式で楽しく面白く、人事労務や組織開発についてのエッセンスを学べるメルマガです。
社会保険労務士の初台厚子(はつだい・あつこ)が、人事労務に関する困りごとやトラブルを解決したり、ヒントやアドバイスを伝えたりしていきます。
今回は、相談内容としては賃金や社会保険・労働保険に関係することですが、そもそも、「こんなこと聞いていいの?」とためらってしまう人事労務担当者のケースです。
さて、アツコ先生への相談には、どんないきさつがあったのでしょうか?
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■◆■ Case10 慶弔見舞金から保険料を引く?ーその不安、社労士に相談してもいいんです ■◆■
ある日の午後、社会保険労務士の初台厚子(通称アツコ先生)の電話が鳴った。
「あの、突然すみません。株式会社ニシトヨの立花と申します。 今、お時間少しよろしいでしょうか?」
電話の主は、最近ニシトヨに入社したばかりの人事労務担当、立花早苗だった。ニシトヨは社員数20名程度の飲食業をしていて、数年来の顧問先だ。
アツコはニシトヨの社長とやりとりもするが、事務手続きは人事労務担当と連絡を取ることが多い。早苗は、今まで担当だった社員が辞めたため、採用されたのだった。
彼女の声は、少しだけ緊張していた。アツコは書類作成の手を止めて、早苗の話を聞いた。
「どうされましたか?」
「はい、社長から『慶弔見舞金って、社会保険料引くんだっけ?』って聞かれて……。 慌てて調べたんですけど、よくわからなくなってしまって、先生に電話してしまいました……」
早苗の声は、どこか申し訳なさそうだった。
「そうだったんですね、大丈夫ですよ。 慶弔見舞金は、社会保険料も労働保険料も、対象にはなりません。 労働の対価として支払うものではないですからね」
「そうなんですね。ちなみに……慶弔見舞金は、給与でもないのですよね?」
「そうですね。先ほどと同様、労働の対価ではないので、就業規則で定められてはいますが、給与とはみなされません」
「ああ、よかった。確認できてホッとしました。ありがとうございます」
受話器の向こうで、早苗が大きく息をついたのが伝わった。
「ご自身でもかなり調べたのですね?」
アツコが聞くと、早苗はこう言った。
「はい。実はですね……『こんなこと聞いていいのかな?』って、ずっと迷ってたんです。 前任者は退職してしまったので聞けないし。
でも、社長からの質問なので、間違えられないと思うと、調べても自信がなくて、ぐるぐるしてしまって……」
「あぁ、そのぐるぐる、よくわかります。でも、遠慮せずに聞いてくださいね。
もちろん、ご自身で理解しようという姿勢は素晴らしいし、情報のアンテナも立ちます。私の説明も入りやすくなりますしね。 でも……」
「?」
早苗はちょっと身構えた。そんな早苗の様子を感じたのか、アツコは少しだけ声を和らげて続けた。
「早くわかれば、火傷もしないですからね。 わからないままにしておく方が、よっぽど危ないんですよ」
電話の向こうで、笑い声がこぼれた。
「そうですね! あ、じゃあ、もうひとつ聞いてもいいですか? 慶弔見舞金から、所得税は引くんでしたっけ?」
「基本的に所得税の対象外だと思いますが、そこは税理士さんの専門分野ですね」
「あ、そうでした。すみません!」
早苗は慌ててあやまったが、アツコは笑いながら続けた。
「社会保険と税金の区別って、よくごちゃ混ぜにされがちなんです。 わからなかったら、まずは聞いてください。 社労士の専門外なら、誰に聞いたらいいかお伝えしますから」
「ありがとうございます。担当が私一人なので、本当に心強いです。 初台先生と話していると、安心します」
「それはうれしいですね。でも、不安な気持ちは、悪いことじゃないですよ。 それだけ丁寧に、誠実に仕事と向き合ってる証拠です。 その不安を、ちゃんと相談できる力があるなら、大丈夫です」
電話の向こうで、ふっと空気がゆるむ気配がした。
「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします!」
「こちらこそ。いつでも、気軽にどうぞ」
電話を切ったあと、アツコはふと、机の上のカレンダーを見つめた。
忙しい時期だった。きっと、これからも質問は続くだろう。
抱えていた不安が、「相談してよかった」になるなら――それは、何よりも価値のある仕事だと、アツコは知っていた。
(これはフィクションです)─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・
人事部の部員数が多い会社もあれば、管理部として総務も人事も経理もまとめられている会社もあります。
人事労務に限りませんが、担当者が一人だと、ちょっとしたことを相談する人がいなくて、困っているケースはけっこうあるのではないでしょうか?
遠慮なくお問い合わせくださいね。
アツコ先生と早苗さんの会話にもあったように、放置しておくよりは、聞いてしまった方がよいです。
たとえ社労士マターでなくても、「じゃあ、誰に、どこに聞いたらいいのか?」のヒントは手に入るかもしれません。
お問い合わせはこちらまで、お気軽にどうぞ。 ↓↓
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