2025.10.09 メールマガジン 社労士アツコの事件簿バックナンバー 退職・報酬変更の“連絡モレ”、実は多いんです……

毎月10日ごろ配信のARIA Solutionのメールマガジン「社労士アツコの事件簿」は、ストーリー形式で楽しく面白く、人事労務や組織開発についてのエッセンスを学べるメルマガです。

社会保険労務士の初台厚子(はつだい・あつこ)が、人事労務に関する困りごとやトラブルを解決したり、ヒントやアドバイスを伝えたりしていきます。

8月に入れば、算定(算定基礎届)の手続きも、そろそろ終わりに近づいきます。

これがしっかり終われば、心置きなく夏季休暇に入れるというもの。

ところが、算定のためにお客様から届いた賃金台帳を見ていると、発見することが多いのです。

何の発見かというと……。

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■◆■ Case11 退職・報酬変更の“連絡モレ”、実は多いんです…… ■◆■

羽木印刷株式会社は、創業45年の老舗の印刷会社。

社長の羽木正は、毎月の資金繰りに頭を抱えながらも、なんとか事業を続けている。

「初台先生、算定に必要な書類を送ります」

と、羽木社長はアツコへメールを送った。

アツコが顧問先から次々に届く賃金台帳に目を通していたある日、ひとつ違和感のある表を見つけた。

「羽木印刷さん……あれ?」

社長の報酬欄。4月は50万円、でも5月から40万円になっている。しかも6月も同じ。

さらに社員名簿には、見覚えのある名前が見当たらない。
赤岩由紀さん——この前までいたはずの社員が、消えている。

アツコは羽木社長に電話をかけた。

「社長、こんにちは。ちょっと算定の件で、確認させてください」

「ああ、初台先生。いつもお世話になってます」

「4月から社長の報酬、下がってますよね? 50万から40万に」

「あ、はい。3月が決算で、4月の株主総会で変更したんです」

「変更があったら、月額変更届(げっぺん)を出さなきゃいけないんですよ」

「えっ、そうなんですか? 減額だし、社員じゃないし、算定とは関係ないかと……」

「いえ、役員でも、固定の報酬が変わったら月変は必要なんですよ。
上がったときも、下がったときも

「そうだったんですか……。いやあ、知らなかった。
年末調整とかで、なんとかならないですかね?」

「……年末調整は、税金の調整です。社会保険料とは別物なんですよ」

「はぁ、なるほど……」

「今回の変更、御社の場合は給与が当月末締め翌月払いなので、5月からの反映になります。
東京の保険料でだいたい9,000円くらい下がる計算です」

「ということは……」

「その分、払いすぎてますね。正しく手続きしていれば、払わなくてよかった保険料です」

「うーん……細かいとこまで、なかなか気が回らなくて」

「それは承知してます。でも、だからこそ私に早めに知らせてほしいんです」

社長が気まずそうに「はい……」と答えたあと、アツコはもう一つの件に切り込んだ。

「それと、赤岩さん。名簿にいないけど……退職されましたか?」

「ああ、そうそう。3月いっぱいで辞めたんですよ」

「えっ、それも聞いてませんでした。
ということは、4月以降、社会保険、払い続けてますよ」

「ええっ!マジですか?」

「マジです。退職の届け出がないと、資格喪失になりません
つまり、在職扱いです」

「あちゃー……」

アツコはため息まじりに笑った。

「算定って、実は“発見作業”でもあるんですよ。
報酬の変更や退職者が、こうして見つかること、よくあるんです」

「そうなんですか……」

「払い過ぎの分は相殺してもらえますけど、いったん御社からの支払が多くなりますし、作業的にも、算定の方が後ろ倒しになってしまうんですよ。
来年はもう少し、スムーズにいきたいですね」

社長が申し訳なさそうに頭を下げたとき、アツコは穏やかな口調のまま、少しトーンを落として、静かに一言。

「報酬の変更も、退職も、”あとで”じゃなくて”すぐ”が基本です」

その言葉に、社長はうなずくしかなかった。

(これはフィクションです)
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「はい! すぐに送ります」と返事をしたのの、日々の業務に追われて賃金台帳や退職手続きに必要な書類を送り忘れていた、ということは、よくあることです。

でも、「〇〇さんが◆月で退職します」とか「給与が4月で変更になります」とご一報をいただければ、社労士側から「あの件は、どうなっていますか?」と尋ねることができます。

何も情報がないと、何も知らないまま時が過ぎていき、算定の時期に発覚! なんてことになってしまいます。
(それでも、わかればいいのですけれどね)

何か変更や動きがあった場合は、顧問社労士にお知らせしてください。

「こんな時はどうしたらいいの?」と、わからないことなどあれば、こちらまでお気軽にお問い合わせください。

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