2026.04.20 メールマガジン 社労士アツコの事件簿バックナンバー 従業員を守る“カスハラ基礎知識”

毎月10日ごろ配信のARIA Solutionのメールマガジン「社労士アツコの事件簿」は、ストーリー形式で楽しく面白く、人事労務や組織開発についてのエッセンスを学べるメルマガです。

社会保険労務士の初台厚子(はつだい・あつこ)が、人事労務に関する困りごとやトラブルを解決したり、ヒントやアドバイスを伝えたりしていきます。

 

最近よく耳にする「カスハラ(カスタマーハラスメント)」。
実は、国は2022年以降、企業にカスハラ防止体制の整備を強く求めてきていました。
2026年10月には、カスハラ対策法(改正労働施策総合推進法)が施行されます。

アツコ先生のところにも、カスハラ対策の問い合わせが入ったようです……

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「初台先生、ちょっと相談がありまして…」

昼下がり、アツコのスマホが鳴った。
若山健──スペイン料理店「Casa Feliz」を2店舗経営する、30代半ばの若き二代目社長だ。

「若山さん、お疲れさまです。どうされました?」

「カスハラ対策を進めたいんです。
 うちの店ではまだ被害はないんですが、同じ商店街のラーメン店で、先週ひどい騒ぎがあって……。
 警察まで呼ぶことになったそうで」

声に迷いが混じっていた。

「それで、ウチでもちゃんと対策しておくべきなのかなと。
 従業員には安心して働いてほしいんですよ。
 かといって、先代はお客様を大事にしていたし、自分もお客様を疑うような店にはしたくないんです」

アツコは、優しくうなずいた。

「とても大切な視点ですね。
 カスハラ対策の最大の目的は、『従業員の安全と健康を守ること』なんです。
 対策をすることで、接客品質も安定しますし、離職も防げて、結果的にお客様の満足度も上がります

「なるほど」

「何より、安心して働ける環境は企業価値そのものを上げます。
 2026年10月の改正法施行もありますし、いま準備するのはとても良い判断ですよ」

若山は少し安心したように息をついた。

「でも、うちみたいな飲食店では、どこからがカスハラで、どこまで対応すべきか、判断するのが難しくて」

「そこを明確にするのが『対策』なんです」

アツコは資料を確認しながら、ゆっくり語った。

「まずは、①対応ルールをマニュアルにして、明文化しましょう
 たとえば『長時間の居座りはどうするか』とか、『大声で怒鳴られた時の初期対応』などです」

「具体的にどうするか、わかるようにするんですね。
 曖昧だとスタッフも迷いますからね」

「そうです。そして②初期対応は丁寧に
 実はこれが一番の未然防止になります。
 落ち着いて聞くことで、大きなトラブルに発展しづらくなるんです」

若山はメモを取りながら、何度も頷く。

「それから、③エスカレーション基準を決めておく
 これは『どこまでスタッフが対応し、どの段階で店長を呼ぶか』を線引きしておくことです」

「たしかに、若いスタッフだと一人で抱え込んじゃうこともありそうです」

「そうなんです。だから④研修とロールプレイをしておきます。
 実例を用いたロールプレイは効果的です。
 練習しておけば、本番でも落ち着いて対応できます」

「はい……」

「そして最後に、⑤経営者が『従業員を守る』と明言すること
 これは本当に、効果が大きいんです」

若山は、ペンを置き、深く息を吸った。

「従業員を守る姿勢を示さないと、ですね」

「はい。現場は言葉にしてもらうと安心しますから」

しばらく沈黙が続いた後、若山が口を開いた。

「初台先生、カスハラ対策って、やることがけっこうありますね。
 マニュアル化するとか、研修・ロールプレイをやるとか」

「厚生労働省が研修用の動画を作っていますし、私にご相談いただきながら整えていくこともできますよ」

「それなら心強いです。まずは自分が勉強しなきゃいけないですけどね」

アツコは微笑んだ。

「若山社長、カスハラ対策は『面倒な義務』ではなく、『未来への投資』です。
 安心して働ける職場は、生産性もサービス品質も上がりますよね。
 だから、従業員を守ることは、お店の未来を守ることなんです」

「お店の未来を守る……。そうですね」

若山はゆっくりとうなずいた。
電話越しに、アツコにもその決意が伝わってきた。

アツコは最後に、少しだけ真剣な表情で付け加えた。

「若山社長。『お客様は神様』という言葉、そろそろ卒業するときですよ。
 守るべき神様は、あなたの店で働いている人たちです。」

若山はハッとしたように目を見開き、深くうなずいた。

「わかりました。従業員を守ること、それがまず最初なんですね」

アツコは柔らかく微笑んだ。

「はい。そこから、いいお店が育っていきますから」

(これはフィクションです)
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顧客からの過度なクレームや威圧的な態度、無理な要求などが日常的に発生しやすくなっている現状には、

・人手不足で従業員ひとりあたりの負担が増加していること
・SNSでの拡散リスク、「顧客第一主義」の過度な行き過ぎ

といったことが背景にあります。

カスハラを放置しておくと、従業員のメンタル不調や離職、職場全体の萎縮に直結します。

カスハラ対策を具体的にどうしていけばよいかなど、こちらまでお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

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