毎月10日ごろ配信のARIA Solutionのメールマガジン「社労士アツコの事件簿」は、ストーリー形式で楽しく面白く、人事労務や組織開発についてのエッセンスを学べるメルマガです。
社会保険労務士の初台厚子(はつだい・あつこ)が、人事労務に関する困りごとやトラブルを解決したり、ヒントやアドバイスを伝えたりしていきます。
産休に入る直前、有給休暇を取得する従業員もいます。その際、シフトや出勤簿はどう作成したらよいのでしょうか?
就業規則や法律に則れば当たり前のことなのですが、ちょっとの手間を惜しむために、間違った処理をしてしまうことがあります。
アツコ先生にどんな相談が来たのか、見てみましょう。
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介護事業を行う、ライフサポートあけぼの株式会社。首都圏に5店舗を展開し、大森支店では社員3名とパートさん5名が働いている。
社員の1人、滝田紗江利が来月から産休・育休に入ることになった。今月の最終週から有休を消化し、そのまま産休に入るため、来月の出勤はない。
「出勤簿、提出しておきますね」
通常は翌月のシフトを当月10日に決定するが、滝田は出勤がない。シフトに関係ないため、出勤簿を早めに提出したのだ。
「ありがとう」
滝田から受け取った出勤簿を見て、支店長の久谷浩二は手を止めた。有休が月の前半に10日分まとまって入っていて、その後は産休。久谷はカレンダーと見比べながら首をかしげた。
「……これでいいのか? 休日って、入れなくていいんだっけ?」
久谷は確信が持てず、本社の人事労務担当・奈良沢京子に電話した。
「奈良沢さん、おつかれさまです。 今メールで滝田さんの来月の出勤簿を送ったんですけど、見ていただけますか?」
「はい、えーと、滝田さんは産休に入られるんですよね」
「そうです。出勤簿で、有休を前半にまとめて入れているのですが、休日の扱いってこれで合ってますか?」
「うーん、たぶんダメだと思います。シフトって組むんでしたっけ?」
「いや、もう来月は出勤しないので、シフトは関係ないと思っているのですが」
「なるほど……。社労士の先生に確認してみますね」
「お願いします」
奈良沢は久谷との電話を切ったあと、しばし滝田が作成した来月の出勤簿をじっと眺めた。
(どうしたらいいんだっけ……?)
久谷の質問にすぐに回答できない自分が嫌になり、モヤっとした気持ちが奈良沢の心に広がった。
しかし、悩んでいてもしょうがない、と奈良沢は気持ちを切り替え、アツコに連絡した。
「初台先生、産休前の出勤簿で相談があって……」
「いいですよ。どうしました?」
いつもの、明るくて柔らかい声に、奈良沢は少し肩の力が抜けた。
滝田の出勤簿をアツコに転送して事情を説明すると、アツコは「なるほど」と相づちを打ちながら聞き、少し間を置いてから答えた。
「まず、法定休日は7日に1日、4週で4日必要です」
「はい」
「それに加えて、御社は週休2日制なので、もう1日は所定休日として設定する必要があります」
「法定休日と所定休日の両方を設定するということですね?」
「そうです」
「じゃあ、出勤簿の6日目と7日目にそれぞれ休みを入れればいいですか?」
「まぁ、そうなんですが、もう1つ注意点があります」
「え?」
アツコは、出勤簿を見ながら続けた。
「この出勤簿だと、有休とはいえ10日連続で出勤日が並んでいます」
「はい。実際は出勤しないのでそう記載したそうなのですが、休日が入っていないことのほかに何か問題でも……?」
「これだと出勤簿上は“連続勤務”と判断されてしまうんです」
「え? そうなんですか?」
「“実際に働いたかどうか”じゃないんです。 出勤簿に出勤日として10日連続で並んでいれば、連続勤務と見なされます」
「……それは、知らなかったです」
奈良沢は思わずメモを取る手を止めた。
「じゃあ、どう直したらいいんでしょう……?」
「難しくありませんよ」
アツコは、また優しい口調に戻った。
「滝田さんは来月、有給休暇と産休・育休で出勤しないので、シフトは関係ありませんよね。 なので、カレンダー通りに土日祝日を休みにして、平日の出勤日に有休と産休を順番に入れる。それで問題ありません」
「そうなんですね! 支店長に連絡して修正してもらうようにします」
数日後、奈良沢から「無事に修正できました」と報告の電話が入った。
「よかったです」
アツコはほっとしたように笑い、そして、少しだけ声のトーンを落とした。
「奈良沢さん」
「今回の件、“出勤していないから出勤簿は適当に作ればいいんだ”という感覚で処理していたら、間違えてしまいます。 もちろん、奈良沢さんも久谷支店長も、適当に作ればいいとは思っていないから、問い合わせしてくださったわけですが」
一拍置いて、アツコは続けた。
「いつでも就業規則やルールをベースに考えましょう。 労基署には、記録で判断されますからね」
奈良沢はハッとして、
「そうですね。気を付けます。勉強になりました」
と答えた。
奈良沢のスッキリした声を聞いて、アツコも安心したのだった。
(これはフィクションです)─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・
出勤簿は、会社の管理姿勢がそのまま表れる書類です。だからこそ、法律と就業規則などの社内ルールを基準に、整えることが大切です。
出勤簿や休暇処理で「これで合っているのかな?」と迷ったら、お早めにご相談ください。このような「小さな判断」の積み重ねが、会社を守ります。
私たちARIA Solutionは、日常の労務判断を安心して任せられる顧問社労士としてサポートしています。
労働基準法の改正が、2027年度以降に予定されています。
「わが社の就業規則は法律改正に対応できているのか?」といったご相談も受け付けております。
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