2026.05.26 メールマガジン 社労士アツコの事件簿バックナンバー 産休前の出勤簿、その書き方で大丈夫?-休日の設定と連続勤務-

毎月10日ごろ配信のARIA Solutionのメールマガジン「社労士アツコの事件簿」は、ストーリー形式で楽しく面白く、人事労務や組織開発についてのエッセンスを学べるメルマガです。

社会保険労務士の初台厚子(はつだい・あつこ)が、人事労務に関する困りごとやトラブルを解決したり、ヒントやアドバイスを伝えたりしていきます。

 

産休に入る直前、有給休暇を取得する従業員もいます。
その際、シフトや出勤簿はどう作成したらよいのでしょうか?

就業規則や法律に則れば当たり前のことなのですが、ちょっとの手間を惜しむために、間違った処理をしてしまうことがあります。

アツコ先生にどんな相談が来たのか、見てみましょう。

  ↓↓

─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・

介護事業を行う、ライフサポートあけぼの株式会社。
首都圏に5店舗を展開し、大森支店では社員3名とパートさん5名が働いている。

社員の1人、滝田紗江利が来月から産休・育休に入ることになった。
今月の最終週から有休を消化し、そのまま産休に入るため、来月の出勤はない。

「出勤簿、提出しておきますね」

通常は翌月のシフトを当月10日に決定するが、滝田は出勤がない。
シフトに関係ないため、出勤簿を早めに提出したのだ。

「ありがとう」

滝田から受け取った出勤簿を見て、支店長の久谷浩二は手を止めた。
有休が月の前半に10日分まとまって入っていて、その後は産休。
久谷はカレンダーと見比べながら首をかしげた。

「……これでいいのか? 休日って、入れなくていいんだっけ?」

久谷は確信が持てず、本社の人事労務担当・奈良沢京子に電話した。

「奈良沢さん、おつかれさまです。
 今メールで滝田さんの来月の出勤簿を送ったんですけど、見ていただけますか?」

「はい、えーと、滝田さんは産休に入られるんですよね」

「そうです。出勤簿で、有休を前半にまとめて入れているのですが、休日の扱いってこれで合ってますか?」

「うーん、たぶんダメだと思います。シフトって組むんでしたっけ?」

「いや、もう来月は出勤しないので、シフトは関係ないと思っているのですが」

「なるほど……。社労士の先生に確認してみますね」

「お願いします」

 

奈良沢は久谷との電話を切ったあと、しばし滝田が作成した来月の出勤簿をじっと眺めた。

(どうしたらいいんだっけ……?)

久谷の質問にすぐに回答できない自分が嫌になり、モヤっとした気持ちが奈良沢の心に広がった。

しかし、悩んでいてもしょうがない、と奈良沢は気持ちを切り替え、アツコに連絡した。

「初台先生、産休前の出勤簿で相談があって……」

「いいですよ。どうしました?」

いつもの、明るくて柔らかい声に、奈良沢は少し肩の力が抜けた。

滝田の出勤簿をアツコに転送して事情を説明すると、アツコは「なるほど」と相づちを打ちながら聞き、少し間を置いてから答えた。

「まず、法定休日は7日に1日、4週で4日必要です」

「はい」

「それに加えて、御社は週休2日制なので、もう1日は所定休日として設定する必要があります

「法定休日と所定休日の両方を設定するということですね?」

「そうです」

「じゃあ、出勤簿の6日目と7日目にそれぞれ休みを入れればいいですか?」

「まぁ、そうなんですが、もう1つ注意点があります」

「え?」

アツコは、出勤簿を見ながら続けた。

「この出勤簿だと、有休とはいえ10日連続で出勤日が並んでいます

「はい。実際は出勤しないのでそう記載したそうなのですが、休日が入っていないことのほかに何か問題でも……?」

「これだと出勤簿上は“連続勤務”と判断されてしまうんです」

「え? そうなんですか?」

「“実際に働いたかどうか”じゃないんです。
 出勤簿に出勤日として10日連続で並んでいれば、連続勤務と見なされます」

「……それは、知らなかったです」

奈良沢は思わずメモを取る手を止めた。

「じゃあ、どう直したらいいんでしょう……?」

「難しくありませんよ」

アツコは、また優しい口調に戻った。

「滝田さんは来月、有給休暇と産休・育休で出勤しないので、シフトは関係ありませんよね。
 なので、カレンダー通りに土日祝日を休みにして、平日の出勤日に有休と産休を順番に入れる。それで問題ありません」

「そうなんですね! 支店長に連絡して修正してもらうようにします」

数日後、奈良沢から「無事に修正できました」と報告の電話が入った。

「よかったです」

アツコはほっとしたように笑い、そして、少しだけ声のトーンを落とした。

「奈良沢さん」

「はい」

「今回の件、“出勤していないから出勤簿は適当に作ればいいんだ”という感覚で処理していたら、間違えてしまいます。
 もちろん、奈良沢さんも久谷支店長も、適当に作ればいいとは思っていないから、問い合わせしてくださったわけですが」

一拍置いて、アツコは続けた。

「いつでも就業規則やルールをベースに考えましょう
 労基署には、記録で判断されますからね」

奈良沢はハッとして、

「そうですね。気を付けます。勉強になりました」

と答えた。

奈良沢のスッキリした声を聞いて、アツコも安心したのだった。

(これはフィクションです)
─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・

出勤簿は、会社の管理姿勢がそのまま表れる書類です。
だからこそ、法律と就業規則などの社内ルールを基準に、整えることが大切です。

出勤簿や休暇処理で「これで合っているのかな?」と迷ったら、お早めにご相談ください。
このような「小さな判断」の積み重ねが、会社を守ります。

私たちARIA Solutionは、日常の労務判断を安心して任せられる顧問社労士としてサポートしています。

労働基準法の改正が、2027年度以降に予定されています。

「わが社の就業規則は法律改正に対応できているのか?」といったご相談も受け付けております。

  *↓↓

*毎月2回、無料のメールマガジンを発行しています。
ご購読のお申込みはこちらからどうぞ!
↓↓